2006年3月18日(土) 於:ドイツ文化会館OAGホール
日本ワーグナー協会創立25周年を締めくくる
ワーグナー・コンサートとファイナル・パーティー
日本ワーグナー協会創立25周年の最後を飾り、去る3月18日、東京青山のドイツ文 化会館OAGホールに於いて協会主催によるイベントが開催されました。節目となる年の 締めくくりにふさわしく、ワーグナー・テノールの第一人者である成田勝美氏と、関西二期会の『タンホイザー』公演でエリーザベトとして鮮烈なデビューを飾り、内外で絶賛されたソプラノの垣花洋子氏のお二人を迎えてのコンサートという、贅沢な一時となりました。また、コンサートの後にはファイナル・パーティーが行われました。
ピアノ伴奏には、二期会オペラ振興会、新国立劇場などでコレペティトールを務め、ワーグナーを始めとするオペラや声楽の伴奏では定評のある大藤玲子氏を迎えるという理想的な布陣で開催されたコンサートの司会・進行役を務めたのは、15年間にわたって協会例会担当の重責を担ってきた山崎太郎理事。山崎氏の紹介でまず成田氏が舞台に登場しました。
記念すべきコンサートの最初に唄われたのは、ワーグナーの『ヴァルキューレ(Die Walküre)』第1幕第3場から、希望と高揚感に満ちた“Winterstörme wichen dem Wonnenmond…”です。ジークムントになりきった成田氏の熱唱に、聴衆は一気にワーグナーの世界に引き込まれました。
続いて、垣花氏が美しいドレス姿で舞台に登場しました。曲目は、ヴェルディの『オテ ロ(Ottello)』第4幕第1場から、デスデモナの“Mi parea ~ Piangea cantando(柳 の歌)~ Ave Maria(アヴェ・マリア)”。イタリア・オペラでも高い評価を得ている 垣花氏がデスデモナの深い悲しみを感情豊かに唄い上げると、ホールには見事な「垣花 ワールド」が出現し、一瞬静まり返った会場からは惜しみない拍手が送られました。
第1部の最後に成田氏が再び登場し、ワーグナーの『ローエングリン(Lohengrin)』 第3幕第3場から、同オペラを代表する“Mein lieber Schwan!…”を叙情味たっぷり に披露しました。
休憩をはさんでの第2部は、ワーグナーの『タンホイザー(Tannhäuser)』から、 タンホイザーとエりーザベトのデュエットを含む抜粋場面という豪華版です。 第2幕 第1場から第2場に続く“Dich teure Halle”から“O Fürstin!…die Freude mein!”まで、次に、同第4場から“Zurück von ihm!”、更に第3幕第1場から “Allmacht’ge Jungfrau!”と、同第3場から“Inbrunst im Herzen…”がドラマティッ クに演じられました。2005年5月の関西二期会『タンホイザー(Tannhäuser)』 の尼崎及び韓国公演でも主役として共演した2氏による、息の合った熱唱と渾身の演技 により、ワーグナー作品に内包された豊かで緊迫した人間ドラマが舞台上に見事に描き 出されると、聴衆は深い感動に包まれました。
盛大な拍手に応えてのアンコールでは、垣花氏が“Dich teure Halle”を再び披露し、 続いて成田氏が“宵待ち草”と、リヒャルト・シュトラウスの“Zueignung(献呈)” を唄いました。2氏の競演によって創り出されたワーグナー世界を堪能した聴衆から は、更なるアンコールを求めて拍手が続きました。
コンサートの後は、ホールに隣接したレストラン葡萄屋に会場を移し、リラックスした 表情の垣花氏と成田氏にもご出席いただいてパーティーが行われました。日本ワーグ ナー協会創立25周年記念パーティーが行われるのは、協会がその公演に協力した関西 二期会『タンホイザー』公演終演後に行われた5月22日の第1回目、特別協賛した東 京シティ・フィルハーモニック管弦楽団設立30周年記念演奏会 オーケストラル・オ ペラVI『パルジファル』終演後に行われた11月13日の第2回目に続き、実は3回目 のことです。それにもかかわらず、多数の会員が出席して楽しい一時となりました。
三宅幸夫日本ワーグナー協会理事長の音頭で乾杯が行われ、続いて、初めて例会に出席 した会員が紹介されました。また、この日を最後に例会担当を勇退する山崎太郎氏に会 員有志から記念品が贈られ、氏の後任として重責を負うことになる新進気鋭の音楽評論 家、船木篤也氏が紹介されました。至福の時を過ごして興奮さめやらぬ会員は、ドイツ 料理を楽しみながら、コンサートの感想やワーグナー談議に花を咲かせていました。